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❅·̩͙12 ページ12

洗い物をやろうとしたら
なんと向井康二に押しのけられた。



女嫌いっぽいからなるべく近くにいない方がいいかと
距離を取っていたのに、触れてくるなんて。
…タックルだけど。



「いいの?」


向「今日俺の番なんで…先輩はお客さんやし
めめと星見るんでしょ?楽しんできてください」



いいのかなーと思いつつもその場を離れた。
で、肝心の目黒がいない。



ウロウロするのもあれだし大人しくテレビの前のソファーで
座ってたら、お風呂に入ったのかジャージ姿の渡辺が前に立って。



『めめ、部屋で寝落ちてたわ』



なんということでしょう。
誘ったのはあっちのくせに、本日のメインイベントが
無くなってしまった。



これじゃただご飯食べに邪魔しに来ただけじゃん。



「そっか、じゃあ帰るね」


『俺も見るっつったじゃん、行くぞ』


「あぇ」



無理やり取られた腕。
細いと思ってたけど意外としっかりしてる。



そのままエレベーターに乗って、最上階である12のボタンを押した。
流れる無言の空間が気まずい。
渡辺、星も月も興味無いだろうになんで。



開いた先は屋上。
このマンションより高い建物が辺りになくて
ちょっとした夜景も見れた。



『月出てんじゃん』



半月だった。
体の半分が欠けても、夜を優しく照らそうと闇に浮かんでいる。



周りを縁取る星は沢山あって、確かにそれらも綺麗で儚いけれど
太陽がいないと輝けない月はもっと儚い。
1人で輝ける星の強さは私には真似出来ない。



流れゆく雲だけが、時が動いていることを教えていた。
渡辺も何も言わないで夜空を見上げていた。



誰かと見る月は、暖かいことを知った。



どのくらいそうしていたか。
不意に聞こえた渡辺のくしゃみで、
私はこの立入禁止の屋上に帰ってきた。



「ごめん、寒いよね。もう終わろっか」


『堪能したの?こっからの月は』


「うん、もう十分。ありがと」


『…あのさ、ちょっと言いたいんだけど』



私の月見の時間を邪魔しないでくれた。
目黒の代わりに連れてきてくれたし、悪いやつじゃないんだ。



今日でまた、彼の一面を知る。



「うん?」


『一人暮らし大変っしょ。なんか事情あるんだろうけど
1人やになった時とかしんどい時とかいつでも来たらいいから。
部屋だって余ってるし』



優しい顔をしていた。
彼を知る度、どこかしんどくなる。



「ありがと」



そう言うので精一杯だった。

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hrr - おもしろくて一気読みしました!続き楽しみにしています! (4月10日 14時) (レス) id: 5934ce0412 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作成日時:2024年3月20日 19時

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